禅寺小僧

日々の記です。

なんでだかね










ゆっくり、ゆっくり、倉庫で甘酒を仕込んでいる。ひ
と月くらいはかかるんだろうな。最初、お米に麹と井
戸水を入れて混ぜあわせたときは台所でだった。樽の
中の水温は20℃くらい。一日したらいい感じに発酵が
はじまって樽から溢れそうになって、実はちょっと溢
れてしまったんで、暖房のない倉庫へ移動した。水温
も10℃以下になり、樽の中も暴走することもなく静か
になった。こんなに冷たいのによく生きているな、と
思うのだけど蓋をあけて覗いてみる。上面には麹の残
骸がういていて、その下は液状になっている。さらに
下には米があるようなかんじがする。水と麹と米を混
ぜたあとは、そっとおいてあるだけでかき混ぜたりも
していない。けどほんとは混ぜた方がいいのかもしん
ない。もともとこんな小さい樽だし、混ぜるほどのこ
ともないのじゃないかと。それでも麹が浮いて蓋にな
ったところをそっとよけてみると、寝息をたてている
くらいのおとなしさで、小さい泡をたてて発酵してい
る。名人とか上手な人はきちんといろいろ手を加えて
いいものを作られる。絶品なんだろうと思う。そんな
腕も才能もないから気候と伝統と材料に助けてもら
う。米の澱粉に麹カビを生やして、麹の作った酵素
澱粉を糖化する、なんて考えるとなんか高度なことの
ように錯覚してしまうけれど、麹は日本の気候にあっ
ているから実に簡単なんだな。うまいこと育ってくれ
る。細かいことをいわなくても、いつも最後はあんが
いそこそこではあるけど、うまくいくような気がして
いる。向上心はないのかもしれないけれど満足もし、
ありがたいこっちゃなとも思う。樽の中の麹君がどう
してるかなと思うと楽しい。ペットみたいなもんかな
としたら、上等な愛頑犬ではなくて、そこらにいる安
もんの放し飼いの犬かな。それでも覗いてみると、案
外いい匂いをたてていのだわ。






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