禅寺小僧

日々の記です。

わらびもち











京都のわらび餅はあんこを丸めたのをわらび粉のあんでくるんである。
わらび粉は春に採れる山菜のワラビの根っこを冬に掘り起こし、その澱粉
を精製したものであるけれど、資料館で掘りとったワラビの根っこをみた
ことがあったが、いたって細い地下茎であった。ご想像のとおりたいへん
な貴重品で、手にはいる代物ではまずない。どこそこの菓子屋では本物の
わらび餅がある、とよくご存じの方らがいうておられるので、なかなか
京都でも本物のわらび餅は少ないのだとおもう。夏になると葛餅というの
が、こしあんを丸めたのを葛の透明なあんでくるんだのが店先にならぶ。
これはいたって庶民的なお菓子でおいしいけれど、わらび餅は葛餅のこし
あんをもう少ししっかりさせて、そとにくるむ葛のあんももうすこしかた
くしたようなかんじやった。くず餅のほうが水っぽくてやらかく、する
っと口の中に入ってくる。













同じ名前のわらび餅が関東にゆくと、サツマイモの澱粉を水でといたのを
鍋で煮いて、水で冷やしたのを四角く切ったのにきな粉と砂糖をまぶして
食べる。いたって庶民的な食べ物で、むかし実家のある田舎では夏の夜、
軽トラで売りに来る人がいた。
「 わらびー餅。わ・ら・び餅だよ〜 」
とスピーカーから流していたけれど、冬は石焼き芋を売る人だった。
夏の夜にワラビ餅を買って食べたら、どんな味がするのだろう?ちょっと
どきどきするのだけど、これを買ったことはない。もったいないか
ら家の鍋でつくっていたのだ。甘藷澱粉のわらび餅粉は驚くほど安い。
水を入れて練れば、簡単に沢山作れるのだ。














お寺ではお客さんが多いとき、そのどっちでもない、わらび餅を作る。
まえにお寺に来てくれた人に作り方を教えてあげたのだけど、家で作った
らうまくできなかったらしいので、少し詳しく説明します。
24センチX23センチの木の箱(これはカステラが入ってた箱だった)で
4センチ角に切り分けるお菓子を36人分作ります。














1・木の箱を水でぬらして、少し乾かし、ザルできな粉をふるっておきます。
あとで木の箱からはずし易くするためにします。きな粉はふるって
おかないとダマになって美味しくなくなります。きな粉は新大宮商店街の
井上砂糖店で買う、一袋136円。
「このきな粉、おいしいやろ、生八つ橋につかうヤツやしな。スーパーの
とは全然ちがう。」
「こっちの黒豆のきな粉は、上等や、きな粉が甘い。」
と店主はいうけれど、黒豆のきな粉は一袋315円する。いちど買うてみたいと
思うけど、まだ買うたことない。














2・わらび餅粉50グラム、甘藷澱粉のやつ。スーパーで買ってきてもら
った値段不明だけど安いと思う。これに水200ccとこしあん800グラム
をまぜて鍋に入れる。あんは一条通り商店街の中村製餡所でわけても
らう。1キロ、1000円。いいご主人でブログも書いておられる。右のア
ンテナの「はる」っいうのがそう。田舎でもらった小豆を炊くとき、どう
も小豆の皮が固いので、あんこ屋さんにどうしたらやらかく炊けるか聞
いてみたところ、











「うーん、そうですねえ、なかなかやらかくならへんのありますねえ、
わたしらはそんな豆は、仕入れんようにしてるんですわ」
とのことであった。ここの餡はしっとりして、おいしい。自分で炊くのが
ちょっとアホらしくなる。忙しいとき、失敗できひんときは店でわけても
らうのがいい。












鍋に入れてかき混ぜて、火にかける。
中火でよかろう。
火にかけつつ、ぐるぐるかき混ぜる。
水分が少ないから焦げそうになるけど、
焦がさんようにかきまぜつづける。












昔のお菓子屋さんは毎日、鍋であんを練るのでその湯気が頭にあたって
たいていツルッパゲだったらしい。あんの湯気は頭の毛に悪いらしいから
頭のツルツルのお菓子屋さんがいはったら、今でも機械じゃなくて自分の
手で練っておられるのかもしれませんな。
ほどほどのところで木の枠に流し込んで、隅までひろげてください。












鍋には貴重なあんこがこびりついてて、洗うのももったいないので、この
上にそのまま次の材料をいれることにします。












わらび餅粉50グラム、水600cc、あんこ200グラム、白砂糖150
グラムを鍋を洗わずに入れて火にかけます。しゃもじで一回目にへばりつ
いたのをはがして洗つつ混ぜ続けます。一石二鳥です。最初は白っぽい色
が透明になり、あんこの色がでてきますから、火が通ったらさっきの木の
箱の上に入れます。二回目のはいちど目のよりもあんが薄いのでとろとろ
いていて柔らかいので、簡単に箱の中でひろがってゆきます。












あとはきな粉を振って、そのままあら熱と湯気を出させます。湯気がとれ
たらラップをします。けっして冷蔵庫にいれてはいけません。涼しいとこ
ろでそのまま冷やします。
次の日の朝、木の枠の縁にひっついているところをはがして、まな板の上
にひっくりかえして取り出します。これで、あんこの濃いところが上にな
りました。











縦横に六等分づつすれば、4センチ角のお菓子が36個とれます。
まえにお寺に来てくれた方にお出ししたら、作り方を教えてほしいと申さ
れたので、教えてさしあげたところ、うまく出来なかったらしいのですが
これにて秘伝口伝漏れなく申し伝えました。










このお菓子は前日に作っておけるので便利です。朝が忙しいときでも大
丈夫です。数も、一つ自分が試食しても35個あるし、35人以上お客
さんがあることもないし、たとえあっても手が回らなくて出来ないし。
そこそこの人数であつまるのなら、今回はひな祭りだったのですけれども
明日くるお客さんのことを考えながら、鍋であんこを練るのも楽しいもの
ですよ。












写真多くなってすみません。












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