禅寺小僧

日々の記です。

まさに行くのだ。










「いま出張で名古屋に来てるんやけど、夕方どう?」
とゲンさんから電話
「来てくれ。まってる」
本当は次の日の打ち合わせとかがあったんだけど、まあ
あっというまに話はまとまった。
夜行バスで帰るから京都駅に出やすいように烏丸辺がいい
とのことで集まった。


が、
「まさにラーメンを食べにゆこう。」
と誰かが言って、タクシーを止めた。
「どの道から行きますか?」
「烏丸を今出川まで行って、東行って志賀越え道曲がって。」
どの道でもよさそうなもんやけど、今日はこの道でないとアカンのよ。


道を上がってゆくと、西村酒店がまだあるある。
貧乏学生の沢山住んでいたこの道沿いに、
「おおお。コンランドリーはそのままやないか!」
「ここで酒盛りしてたんやなあ!」
コインランドリー仕伏は今夜も煌々と蛍光灯が点いている。


まさのおばちゃんはまだいるんやろうか、まだ生きてるんやろか。
道を曲がって天神湯のところまでくると、まさが見えた。
電気が点いてる。タクシーを降りてドアに近づくと準備中の札が
下がっていた。客はおばさんと若い母親と赤ん坊。


「すみません、今日はもう終わりなんよ。」
信じられないことに、なんと昔そのままの姿で、まさのおばちゃんは
カウンターの中にいた。
「実は昔、20年ほど前この辺で下宿してたんやけど。」
「そしたら、とりあえず入ってー。」


テーブルも椅子も雑誌もなんにも変わらん。
染めてはるのかもしれんけど、おばちゃんの髪も真っ黒けや。
かわったのは町並みで間貸しをしていた家や普通の家での下宿はほとんど
なくなって、マンションになった。敷金礼金ナシだから住みついていた
ようなものだったけど、今はそんなところには中国からの留学生たちが
すんでいるらしい。
それぞれの大家さんはこの辺の代表的な大家さんだったらしいが、
どの方もみんな亡くなられたという。


「9時で終わりですか。風呂から上がってきても開いてたと思うんやけど。」
「昔は下宿やったし、ここ来たら食べモンあるしみんな集まってたけど、
今はマンションやろ、みんな自炊するらしいわ。私も高齢者やしな。」
まえはバイトの子もいたし、学生であふれていて、話したり漫画雑誌TVみながら
飯食ってた   


ラーメン定食っていうのがあった。
これハンバーグ定食にラーメンがプラスされてる奴で、これだと一日一食ですんだ。
野菜好きの友が、毎日、メニューにない野菜炒め定食って頼んでいるうちにメニューに
なった、自慢の種の野菜炒め定食は健在やないか。


三人でまさラーメンを頼み、ビールも2本頼んだ。遅れてもう一人来た。
知らん間にまさは探偵ナイトスクープにも出ていたらしい。
幻となった百万石のラーメンの味を求めてというような企画だったみたい。
「何にも変えてへんけど。」
おばちゃんが持ってきてくれたラーメンは、この味やった。
50円値上げしたというまさラーメンは昔の味そのままで、400円。
今どきまだこの値段とは。安い。旨い。懐かし。
あの頃はラーメン代すら滅多になかったけど。
あまりにお金が無かったせいで気がつかなかったけど、まわりの人の親切心の
おかげでここまでなんとかこれました。