禅寺小僧

日々の記です。

峠道









で、このたびの旅は結構しんどかったんだ。
ひとつには最初からずっと小雨が降っていたことで、秋晴れの中を
すすむのとはちょっと気分がちがうし。もうひとつは進行速度が遅
かったことで、最初の中岳を登るのは立派な登山道があったからよ
かったけれど、その後、南岳に行く道ではもう、細々として、しかも
このあたりの尾根筋は痩せ尾根で、岩場になっているところも多か
った。鎖やロープを垂らしてくれてあるところもあるけれど、ガレ場
を下って行くことも多かった。













この峠みちは、行場というよりは昔の移動のための道路であったろう
し、ふつうに行き来していた道だったとおもう。江戸時代のでっかい
国境を示す石碑が屹立していた。これから一日以上歩く道は昔の国境
の上を踏んでいくことになる。というか、今も県境なんだけど。













道しるべに、急登と書いてあるけれど、たいしたことあらへんやろう
とタカをくくっていたら、エライ目にあった。こっから先はほんとに
急登になっていて、また尾根道で露岩のところも多くて、またロープ
のお世話になる。ザックも樹にひっかかるんで難儀した。道しるべに
書いてあったことは本当でした。知っている人が親切に書いてくれて
いるのに、なんで信じれんのやろうね。














峠で独りザックをおろして、お茶を飲んで休憩しているとき、ん?と
思って岩の苔をはがしてみると一文銭が一枚でてきた。なんのお金だ
ったのだろうかね。江戸時代の旅人が置いていったのか、落としたか。
手にとって眺めて、もとの場所に戻しておいた。
峠の風に吹かれるままにしておいてやる。