禅寺小僧

日々の記です。

たわしと豆腐





電話で、近所のおばあさんから、二輪車が欲しいの、
って言ってきたから、一緒に車で出かけることにした。
「この車はあなたの?大きい車に乗ってるのねえ。沢山乗れるんでしょ」
って言われる。この車を褒めてくれる珍しい人である。


ゴミの日に集配所にもっていくのに、一輪車だとこかすし、
とおもっていたところ、誰かに玉の二つ付いた二輪車がいい、って
吹き込まれたみたいで、それを探しにホームセンターに行く。
駐車場に車を入れていると、
「あなた、ここは車屋さん?自動車売ってるの?」
「イヤイヤ、ただの駐車場です。スーパーの。。」


結局二輪車なるものは売っていなかって、あきらめて店を出た。
「駐車場代はいらないの?」
「要りません。」とか言ってでてきたら、、今度は竹箒が欲しいのだと。
それもホームセンターのでは駄目で、三条の鴨川にある店のがいいんだ。
誰かに、ここのがいい、買ってきたらって言われたらしい。


三条通りの鴨川端で江戸時代からタワシを商っている店で、東隣は五色豆屋さんで
ここも古い。その隣の川に面したところは旅館だったとおもうけれど、今はスターバックス
に変わった。西隣の中古カメラ屋のキネヤはフライフィッシングの店になり、
向かいの中古カメラを売っていたムツミ堂の高瀬川店も無くなった。
河原町と鴨川の間の短い距離なんだけど、店と街並みはどんどん
変わってゆく。そんななかでこのタワシ屋さんはしぶとい。


店の中に入ったのは初めてだったけど、タワシ、刷毛、棕櫚箒などが主力商品で
つまりはブラシ屋さんなのであるけれど、特に品揃えが多いというほどでもない
のを並べて売っている。真新しい銅線でしつらえられた、
棕櫚の中心の繊維を利用して作ったような箒がつるされていて、8000円の値札が
ついているのを眺めていると、となりの二人連れの客のおばさんが、
「掃除機でも1万円、2万円するものねえ。これのほうが、畳に艶がでていいのよ。」
なんて話しかけてきて、
「昔はキビで作った白い箒も売ってたけど、今は無いのね。」
「ああ、お寺にもありますよ。掃除機かけるより箒のほうが早いしね。」
この店にくる人は物の値打ちを知っていて、納得ずくで買っていくらしい。


タワシで作ったワニの人形を触りながら、おばさんが店番しながら作るんですか?
って言うと、
いえいえ、店番だけで精一杯で。
という。お孫さんの小学生が学校から戻ってきた。
「これは昔のタワシですかね?」棕櫚を棒状に束ねたのを見せると、
「昔は切り藁、って言ったみたいですから、藁だったみたいですが。」
「そういえば古い草鞋を巻いて鍬なんかを洗ってましたな。」


黒竹の細い柄のついた竹箒は2200円で、重心が低いものだった。
掃くときは掌の中で竹の柄回るんだと思う。
おばあさんは明朝からこれで掃除する。


帰りに天神さんの近くのとようけ屋によって、豆腐を一丁おばあさんに買う。
こうも暑いとよく売れるらしく、もう辛子豆腐は売り切れてた。
木綿が158円。この原料高のご時勢に。
ここも繁盛していた。