禅寺小僧

日々の記です。

中華蕎麦












お昼ご飯はどうしますかね。この町で食べていくか、この先の町にします
か。山間の町にはうまい蕎麦があって都会からも車で食べにくる人が多い
んだけど、むかし旅してたら土地の人はみんなラーメン食べてましたよ、
って話してた。ここいらは中華蕎麦が名物なのよ。そうですラーメン屋の
ラーメンもいいけれど、中華そばもうまいですよ、廃業しちゃって残念な
んだけども近所の尾張屋の(そば、うどん屋さん。出前もしてくれた)中
華そばとか旨かったですよ。懐かしい。やさしい、蕎麦のだしをベースに
日本風ラーメンに仕上げたパンチはないけどほのぼのしたかんじがいいで
はありませんか。いまでもファンだな、冷やし中華もよかった。もちろん
きつねうどんもよかった。美味くて、かといって有名でもなく、安くて、
かつこころよく出前もしてくれてって店が近所になくなって寂しくて、不
便になりました。中華そばっていいもんだと思うんですよ、でどこの店が
おししいですかね?わたしは高砂さんが好きですね、いい味だしておられ
るとおもいますよ、国道の左がわです。














きのうの晩はそんな話をしていた。さてどないしますか、なんとなく保留
のどっちつかずの結論のきまらないまま、町を出ようとしている。町並み
をはずれて走ると国道沿いに道の駅がみえた。あ、あそこで食べていきま
す?どっちでもええぞ。じゃあここで食べて行きましょう、入りますよ。
あ、ちょっと待って、道の駅の向かい側にラーメン専門店があるぞ、あっ
ちにしよう、そら専門店やろ。とおっしゃるので、道の駅の向かい側にあ
る木をふんだんにつかって建てましたふう、築10年くらいのわりと新し
そうな店に車を停めた。小屋も臼も杵もなにもない水車がむきだしのまま
ただくるくると駐車場のすみで回っている。その向こうでは山野草とかを
売っているみたいだった。














戸をあけて店にはいると、若い男の子が中華そば定食をたべながら、店の
おじさん、おばさんと話していた。いらっしゃい、といっておじさんとお
ばさんは厨房の中にはいっていった。メニューはラーメンと地元ブランド
牛の鍋、あとなんか山の感じのするみたいな品ぞろえ。上をみあげると、
大きな梁。これくらいの屋根でこんな梁がいるんですかね、冬は雪がすご
いんやろか。そら見てもらうようにわざと大きいのやろ。あれ、あっちに
はおしゃれな薪ストーブがあるじゃないですか。厨房と食堂の間のカウン
ターテーブルのしたには横長の大きな水槽が二つおいてあって、水の中に
は沢山の水草とメダカと金魚がはいっていた。なんにする?ラーメンにし
ます、ふつうのラーメン。そしたらわしもそうするってあとの二人もふつ
うのラーメンにするっていうので、ラーメンを三つ注文する。男の子は食
べ終わると、食器はそのまま机のうえに置いたまま、厨房にはいっていっ
た。手伝うでもなくおじさんとしゃべっている、ここの息子なんだろう。









友達がラーメン研究会の会長サンなんですわ、なんていっているところに
ラーメン三つ到着。なんとなくみんな無言。どうぞ、って箸とレンゲをわ
たす。ありがと。スープをすすってみる。まあなんとなくおいしい。麺は
細麺、味は単純な薄味。焼き豚は丸くなっていて、なんとなく味はあんま
りついていない。ワンタン麺みたな味ですな、エースコックのワンタンメ
ンみたい、ワンタンじゃないけど。なんとなくみんな元気なし。別のお客
さんが三人はいってきて、定食とあと地元ブランド牛の鍋みたいのを注文
したみたいで、おばさんがミニカセットコンロを持っていった。














ここは出しとこと、伝票をもってレジにいく。ええ、まとめて。いやあ、
おいしかったですわ。出しは何でとったはるんですか?えっ、。まあいろ
いろ。昆布とかですか。ええ昆布とか。。おばさんは言った。なんか業務
用のだしを薄めてただけんかなあ。空は晴れていた。むかいの道の駅のほ
うがよかったんちゃうの? いえ先輩がそら専門店やろっていうてじゃな
いですか。中華そばが名物と聞いた。盛り上がった期待を、スコンと爽や
かにすくってもらった。涼しい風だ。








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