禅寺小僧

日々の記です。

撞木








大鐘を「ゴーン!!!!」と撞く撞木の木がなかなか無くて、それはなんでかというと、鐘が立派すぎるくらい大きいから。鐘を撞く木はなんでもいいかというとそうでもなくて、ケヤキやヒノキなら撞木にするくらいの大きな樹はいくらでもあるんだけど、同じ鐘を撞くにも撞く木によって音色が変わって、できればシュロの木で撞くとやさしい音でゴーンと響く。シュロの木は堅いところがなくて、たぶん年輪もなく、縦の繊維がずっとつづいてるんとちゃうやろか。鐘の青銅とあたりがやさしいんやと思う。あんまりカンカン響かんほうがええしね。重く低いほうがなんかここの鐘の音の雰囲気にあうんやろと思ってる。















鐘は重要文化財に指定されるような貴重なものなんだけど、大きすぎて鐘のサイズに合うシュロの幹がなかなかない。いままでも大きいシュロの木が無くて困っていますと話すと、「そんなんウチの裏山に来たらいくらでも大きいのが転がってるよ。どれでも持っていっていいよ」って言ってもらって喜び勇んで行ってみるとたいてい話で聞いてたのより小さくなっていて、シュロの幹の表面を覆っている棕櫚縄とかの原料になる皮をめくると太さはもう三分の一くらいになってしまう。なかなか思うような太さのがあらへんのですわ。だけど毎夕の鐘を撞くたび撞木はだんだん潰れて減ってゆくしね。


大阪の方から連絡があって行ってみた。今度は山奥ではなくて、町中の工場地帯のど真ん中であった。こんなところに、工場と道路の間のフェンスの隙間にその棕櫚の大木はまっすぐ立っていたのでした。これは大きいよ。






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