禅寺小僧

日々の記です。

オオオニシュロ






曇りだったのに雨が降ってきて、涙雨なのかもしれないけれど、棕櫚の伐採が始まった。今までの労をねぎらうような気持ちで、一升瓶の日本酒を一本捧げかけた。根元あたり太さは50センチくらい、樹高は10メートルほどある大木で、工場の方の話だと、隣の工場からのあたたかい排気があたるから冬でも生長して、こんなに大きくなったんでないかと。でかいでかいとにかくでかい。幹もたっぷりしてるし、葉っぱも大きい。人間ぐらいのサイズがある。葉っぱの柄も凄くてノコギリみたいにトンガッてる。手にあたったら痛い痛し。ノコギリ引きの刑に使えそうなシロモノで、ただ者ではない。棕櫚の歯の柄ってこんなんだった?蓮の種類で、でっかい奴にオオオニバスっていうのがあったけど、こいつはオオオニシュロって名前がついててもおかしくないような奴でタフで強く、大鬼と呼ばれてもおかしくないふてぶてしさ、正義というよりは悪の強さを持ってるんだな。ちょっとそこらの棕櫚とはちがうよ。たった一本だけどここで悠々と大きくなってきゃはったんやな。切り倒して、皮の下を見てみると薄い皮があるだけで、外形の太さがそのまま木材の太さになるような棕櫚だった。幹はどっちかいうと椰子に似てるかもしれない。けど葉は棕櫚で種も棕櫚のものだった。日本古来に自生している棕櫚とはもしかしたら種類はちがうのかもしれない。なんて名前がついていてどこからやってきたのか、素性はまったくわからない。たった一本だけ生えていたのを寺まで持ってかえってきました。伐採した断面は年輪も見えないまったく汚れのないクリーム色の美しさ。枯れている葉の柄はものすごく堅かったから、今はやわらかい材も乾燥してゆくと堅くなっていくやろと思ってます。10年くらいは木小屋で乾燥させて、それからいよいよ出番ですかね。



いつも細くて悲しいことばかかりやったんやけど、今回ばかりは太いよ。大丈夫かな、ちょっと太すぎるぐらいの奴やった。







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