禅寺小僧

日々の記です。

漠として、










雲のひろがった日、
落葉して、いろんな思いも落ち着いて
何かが止まった、冬眠の季節
寒谷をしばらく歩いてゆくと
鳴き声が聞こえる。












路のとなりの斜面が、ガサガサッ、って音をたてて
笹のヤブが動いてゆく。
そうだとは思っていたけれど、
さっきから鳴いていたのは鳥ではなくて猿なんだな。
何頭ぐらいだろうか。












20か30頭ぐらいはいそうな大きな群で、周りのあちこちにいて、
沢に生えている樹に登って、枝に残った実を食べている。
来春の新芽を食べているのかもしれない。
地面で草や種を探している奴も。
どちらも無一物に甘んじて素寒貧。
お見事、生きておられる。












ささやかな食生活を満喫されていて、
吹っきさらしの、そのもの。












そんな中、火を熾し、湯を沸かす。
茶を点ててみる。












汲々としてるだけではない。
キヤッキャッ言って、藤づるやらワイヤーロープに
ぶら下がって賑やかに遊んでいる。










古木寒巌に野猿鳴く、
陽が傾いて、さらに寒くなってきたけれど、
ひらけて解けてきた。












谷にいるあいだ、猿は人を畏れるでもなく、
襲うでもなく、なんとなく互いに無視しつつ眺めもし、
食べたり遊んだりしていた。
上の方まで遊びにゆくと滝の周りでは水滴が凍って、
つららができていた。
一日中、とけないんだろう。
雪はないんだけど、真っ盛りの冬だった。












山桜が沢山ある。
黙っているからどんな花が咲くのか、
春には花見をしたい。
賑やかでなくてもいい。
花は咲いていますか?












なんとなく、猿が見ていた景色が気になって、
彼が坐った場所に歩いてゆく、
山から街を眺めてみる。













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