禅寺小僧

日々の記です。

淋しい歩き方









テント、シュラフ、炊事用具、食料、雨具、着替え、それ
に地図とコンパスを詰め込んだザックを、自分の背中にお
いねて、脚をうごかして旅をするのは、重くておそくて、
淋しいけれど、幸せなことであるな。
地面に臥して、眠ってしまえるのは、家を離れてしまいた
いときには一番じゃないか。家出といって生まれた家を出
ても、町に暮らすかぎりはまたどこかの家に、どこかの屋
根の下に行って眠るのだけれど、いっそ山にはいってしま
えば、娑婆の空気はどこかに行ってしまう。出家といっ
て、家を出て寺にはいるわけなんだけど、自由人になれる
わけではなくて、社会にいるよりよほどストレスたっぷり
のところに身を置くわけだから、のんびり隠遁生活を送れ
るわけじゃない。
歩いていて、日が暮れてきたら、ここだと今夜の場所決め
る。それから山の中で坐禅して、夜が更けてきたら眠る。
自分独りでそんな修行が規則正しく、長期期間つづけられ
たらいいとおもうけれど、目標や切磋琢磨がなくなってし
まうような気もするな。けれどそんなところに憧れてしま
うのは、単なる逃避行か。何が解決するわけでもないのに
な。出家してみたいという人には、似たような人も多いん
ではないか。それだったら寺にゆくより、一人で人のあま
りいない山に入ったらいい。一日歩いて、泊まって帰って
きてもいいし、どこかで休憩して紅茶なりコーヒーなりを
沸かしてもいいじゃないの。











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