禅寺小僧

日々の記です。

天地と我と同根、万物と我と一体





大分の寺で一泊させてもらった次の日は、福岡の寺にゆく。
夕方からの一般の方の来られる座禅会に参加させてもらった
次の日の朝、早くから目が覚めるのにまかせ、本堂で坐って
みた。


ビールが濃くはありませんか、薄めなさい。とビールに焼酎を
注いでいただくのがなかなか旨い。隠居された老僧と晩御飯を
いただきつつお話を伺っていると、老僧の現役時代には月曜から
金曜まで週5回、朝5時からの座禅会を丁度5,000回したという。
最後の5,000回目の会には縁故の方が集まって盛大だったらいが、
やっぱり普段の参加者は少なかったらしい。


ただ、ご近所さんで熱心な参加者が二人いて、一人はキリスト教
神父さん、もう一人は京都に出て10年修行し、坊さんになった。
この人は6時まで座禅してから和尚さんとお経をあげていたが、
寺の開山忌の法要に出たいと和尚にいったところ、その頭ではイカン。
きちっと丸めて来い。といわれると、黙って頭を剃ってきたという。
残念ながらお二人とももう亡くなって、この世にはいない。


眼下の夜景を眺め、ひとり本堂の縁側に坐っていると、
やあ、眠れましたかな。といって老僧がおいでになった。
本堂で一緒にお経をあげさせていただいたあと、
外にでて、あちこちにお堂やお地蔵さんが多いので、
祠をまわっていちいちお経をあげにゆく。
老僧は手のひらでパンパンと木の幹を叩きながらあるいてゆく。
去年の夏ここにあった五葉松が枯れてしまった。かわりにツゲを植えた。
なんていう。樹の幹を触って、ヨシヨシおはよう。なんて言う。


池の鯉を集めておいてから、餌をやり、両手を横に拡げて、
「天地と我と同根!万物と我と一体!ハーッハッハッハッハッ!」
と叫んだ。
ワシは楽しんでおるのだよ、と。


新しい住職にかわってから座禅会は曜日を決めて毎週一回、夕方から夜に
することになり、参加の人数も増えたし、その日もインターネットで調べて
きたという人もいた。会社帰りに参加できるようになったということだ。
時代にあわせるとやはりそのようなやり方になるのがいいのだろうけれど、
老僧のされていた参加者の少ない会も偉大な会であった。