禅寺小僧

日々の記です。

Stay Here ?











小さな旅をつづけてきた。












車を停めて、ザックを担いで山にむかって歩きだすとき、
ああ、なんとかここまで来れたんやな、とちょっと思う。
19の時に買ったからもうかれこれ20数年になるザック
は、globe trip という無名メーカー?の、たぶん80L
くらいの容量があるやつで、たしか大きくて安かったから
買うたんやった。貧しくて、別売だったウエストベルトを
買えなくていまだにつけれていない。雨の日用のカバー
あったけれど、どこかでひっかけて破れて、捨ててしまっ
た。こいつとならば長旅ができるから、頼りになるいい相
棒として続いている。今風の曲面のフレームが入って背中
全体にピタッと吹つくようなタイプじゃなくて、肩の皮膚
がすれるようなしんどい奴ではあるんだが。こいつさえ担
いでいればどこへでも行けそうな、旅の暮らしをつづけて
いけそうな幸せな気分にさせてくれる奴なんだ。












車や汽車に乗ったら、流れてゆく風景をずっと眺めている
のが好きだった。旅への想いのの根本は、どこへ行きたい
ということでもなく、流れていたいという感覚だったのか
もしれない。ひと所に留まれない、じっとしていられな
い、なんとも落ち着けないそんな病気のようなもの。クラ
ブの先輩からは、おまえは放浪癖がある、といわれたけれ
ど、事実、バイクの上に乗って道路を疾走しているとたい
そう気持ちがよかった。学生の頃の友人が就職して、新車
の白いカローラに乗って京都へ遊びにやってきた。車の運
転好きか?と聞くと、好きやなあ。なんかやってるって
気がすると、言っていた。フロントガラスに映る風景を愛
して運転する者と、ヘルメットのシールドに流れてゆく風
景の中に身を置く者と、おなじような人種でおなじような
疾をもっていたのだろうか、そのご彼は命を絶ってしまっ
た、まだまだ沢山、好きな酒が飲めたのに。












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