禅寺小僧

日々の記です。

女郎くも





門を出たところは細い通路になっていて、
松の並木を風が通る。通路をまたいで樹と樹のあいだに
ジョロウグモが大きな巣を張っていた。女郎グモは大きくて
黄色の利いたカラフル娘であるし、巣も一重ではなく、二層
構造の立体派で見ていて飽きない。門のすぐ前にそんな大きな
巣があるのは、掃除をしていない!と誰かに指をさされそうなの
だけれど、なんとなくうれしくてそのままにしていた。


昨日、お昼に通りがかると、隣寺で殺虫剤を撒いていた。
その横を歩いて帰ってきたが、殺虫剤の臭いというのはなんとなく
飯がまずくなるね。などと思っていたのが、夕方通りがかると、
案の定、女郎蜘蛛は地に落ちて蟻の餌食と化し、ほとんど食われた
あとだった。主が居なくなって、ガランドウの巣には風が通るばかりで
なんとも。
今年の夏は暑かった。残暑も厳しく、例年には珍しく害虫もチャドクガ
大発生した。秋の発生も多く、かつ、虫のサイズも大きいようだ。


同年代だが立派な和尚さんが湖畔に住んでいて、このあいだたずねると、
中庭のモミジの土用芽がほとんどぜんぶ毛虫にやられてるナ、と見ていると、
毎年発生するんですけど、駆除はしないんですよ。これも生きてるんでね。
とおっしゃる。確かにそうだろうし、樹がある限りは葉を食べる虫がいるのも
当たり前だと、思うのだけど、世知辛い世の中では生かしておいてもらえない。


女郎蜘蛛と毛虫のみなさんの冥福を祈ります。