上七軒にて。
かつて、上七軒は、祇園、島原、先斗町と並ぶ色町で、
舞妓、芸妓方もたくさんおられた、らしい。
場所は北野天満宮のスグ東側だから25日の天神さんの日、
チラッとより道する。
草履をぬいであがる店はガマ口屋さん?で、女の子がたむろ
している今風の、町屋の店で、場所柄、それこそ昔はお茶屋
さんやったんやろうか。入っていくと店員さんは
「あんた何しに来たの??」みたいな顔をする。財布には
用事なしで、店内をにらんだら、あやしそうな階段があった
ので、上ってゆく。二階に着いたら「ここだよ。」と書いた
版画があった。
美由紀さんはとってもあったかい、不思議なユーモアを感じ
る版画をする人で、本業はアウトドアで力仕事(
だけではないと思うが)をしているウーマンである。一日、
太陽に照らされて帰ってきて、まだいくらか手に握力が残って
いる夜は眠気と戦いながら木を彫る。人柄そのまま、版画も
素朴であたたかく、力強くてかわいい。マジックでイラストを
描いて、そのまま版にしたような、作風で技術やテクニックとは
まったく無縁そう、に見える。はじめて作品展にお邪魔したときは
初対面だったから、あまりのストレートさに面食らっってしまった。
けど、見ているうちにだんだん魅かれてゆくのだわ。
この単純な画面に。。
木を彫って裏返しの版を作り、それに墨を塗りたくり、紙に押し付ける
と原画より生のものが弱まって、共通の風合いがでてくる。
靴を脱いで上がる町屋の雰囲気と相まって、小品をじっくり鑑賞できる。
ふと、そんな和室の効果に気づいた。和室でやるなら小品だ。
酒のラベルも展示してあった。
「なんでこんなん作ったン?」
「ギャラリーみせてもらった時、ここにこの台があったし。」
「俺の酒のラベルも作ってくれんかナ。」
「エエ名前が思い浮かんだらネ、けど、ブツブツ交換ですよ。
私も酒好きですから。」
だと。