向こう岸で
夕方、一組目か二組目の客として居酒屋に入った。
最初は二人でいろいろ話していたんだけど、そのうち隣のおじさん
とアレコレ世間話が始まった。おじさんは近所の工場の社長さんで
学生下宿もあって、コンビニも三件あって、しかも各店すべて黒字だと、言う。
「へぇぇっ。」とうなずいていたら、
「学生!おごりだ!」とこっちの払いを全部してくれるんだと!
なんてラッキー。って思っていたら
「イエイエ、ダメです。」相棒が頑なに断っている。
「まあまあ、奢ってもらえば、良いじゃないか。」というと
「コイツには先輩とも思われていないんです。」とか言いながら
また断っていた。
店を出るときには、もちろん全部出してもらっていたんだけど、
「あんなこといわれても、百回くらいことわらんと。」
なんて言ってるようなヤツだった。
地方大を滑っていながら京大に受かったんで、
京都に出てきたんだ。と母上から聞いた。
京都ではいろんなことがあったな。
あの下宿の臭い匂いはどんなだった?
昨日、お経をあげているとき、床の間の上の方から
お前が見ているような気がしてたぞ。
一路平安
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