禅寺小僧

日々の記です。

花の咲くほうへ

hekigyokuan2006-03-10

 夕方、「こんにちわー。」と声がして、何の前触れも無く、オヤジさんがやってきた。
背は高くはないけれど、60を越してもガッチリ、頑丈そうな身体つきをしていて、
髪を短く刈込み、いつも、なんやかんや、していて、家に行ってもたいていは、居ない。
「和尚っさん、」と誰かに道端で、呼び止められて、振り返ると、軽トラで自分の作った野菜を売っていたこともあった。人の顔を見ると、眼を細め、頬をちょっと持ち上げて話しだす癖があって、悪い気がしない。四国の田舎から養子で京都に来た人で、昔は、商売も大きく、西陣織の工場をしていたらしいのだけど、もう止めてしまって、今は、儲からない、骨折り損ばかりを喜んでしている。
 玄関で、青いゴミ袋からゴソゴソとり出したのは、ハスの根っこで、「2本あるから、植えとけ。」って言う。なんでも今日、いつも掃除しているどこかの病院に持っていった蓮鉢の植え替えをして、株分けして余ったヤツらしい。2本のうちの1本は、真ン中の芽が折れて無くなってる。こんなもんの植え替えを後で、一人で、やることにしたら、きっと、うっかり忘れてしまうから、その場で、オヤジさんと2人ですることにした。ちょうど昼に畑で溝を掘っていたから、その時の土を使う。「京北の周山は雪に埋もれてるけど、こっちはエエな」「こないだログハウス建てたで、今はヒノキ1本、3000円や」「今年咲くかかどうかは、わからんデ」と言ってオヤジさんは、帰った。