禅寺小僧

日々の記です。

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誕生仏

 

4月8日はお釈迦さまの誕生日です。大徳寺でも乾かした甘茶の葉を煮出して甘茶を作って、天と地を指さす誕生仏に注ぎます。伝説ではお釈迦さまは生まれてすぐに、東西南北に7歩ずつ歩きいて、天地を指さし、「天上天下唯我独尊」(てんじょうてんげ ゆいがどくそん)と言われたそうです。

 

東西南北と上と下。「この世界で、ただ私を最も尊重します」と宣言されたのです。何ものにも頼らない。他の人の意見や、誰かが考えた哲学や教義を尊重するのではありません。またお釈迦さま神さまからつかわされたのでもありません。神の言葉を伝えに来られたのはないのです。

 

内閣府の平成30年度の調査~日本の若者意識の現状~国際比較からみえてくるもの~ https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/r01gaiyou/s0_1.html

には興味深いデータが載っています。

「自分自身に満足している」という問いに、「そう思う」と答えた日本の若者は10.4%、アメリカの若者は57.9%でした。

 

「つまらないものですが」と言って贈り物を手渡すような、つつましさが日本の文化には根付いています。そのことで無用の衝突も防がれていることでしょう。ですがちょっと残念な気もします。

 

外国で生活したことがある友人の話では、外国人は自信があって発言力が強いそうです。子供のころから、あなたは特別だ才能があると褒められて育てられるからかもしれません。

 

自分自身の子供の頃を思い出してみても、怒られてばかりでした。親にホメられたことはあまり記憶にありません。友達のお母さんや隣の組の担任の先生に励まされたことはあったけど。近くにいる人には怒られてばかりいたような。お前は変わってる、変人や、とも。

 

でもそこが出発点だったのかもしれません。他の大勢の人と自分は違うかもしれないけれど、そこを土台に立ち上がるのです。その先にはたぶん険しい道が続いているでしょうが。

 

お釈迦さま誕生物語を読むと、他人の価値観にただ従うのではなく、自分自身の奥底の気持ちや沸き上がるものに眼を向けようとする姿勢を感じるのです。