禅寺小僧

日々の記です。

もと作り








日曜日の午後、友(酒好き)と立ち読みに入った本屋で、日本酒の特集の雑誌が二冊あって、そのうちの一つが日本酒の製造工程のスタートの生酛の特集だった。酒の薀蓄になかなか熱心な彼なんだけど、生もと、山廃、速醸の違いをもう一度はっきり勉強するとかで、その本をレジにもっていきよった。で、そろそろ開店時間になったんでそれから店のほうへ歩いていったわけ。















あなたもご存じのとおり、日本酒は仕込み水と蒸米と米麹をタンクで混ぜて作るんだけど、それだけでは甘酒になるだけで、酒にはならんわな。そこに酵母を入れると、酵母が糖を分解してアルコールと二酸化炭素をなるわけで、その酵母を培養する方法に前述の、生もと、山廃、速醸の三つがあるわけですね。毎年冬になると甘酒を仕込んできましたけれど、もとを入れることもなく、米麹1升とごはん1升と井戸水2升を木の樽にいれるだけの自然発酵にまかせてきて、それでそこそこ上手くできてたんだけど、他でやってる人には酸っぱくなってしまったって言ってる人もいるし、昔から作ってるって人でもうまくいくときと失敗するときがあるって言っておられた。う〜んと考えていたんだけど、日本酒の仕込みを参考に「もと」をちゃんとつくらないとダメだという思いがしてきた。近代的設備をもってないから江戸時代の作り方がぐらいがちょうどいいわけですね。先人の知恵を学ばせていただかないと。















この人は才能もあるキチンとした料理人なんだけど話を聞きにこられて、造りの指導は別の人に習ったみたいだったけど、その後つくられましたか?って電話があったんで聞いてみた。ええ、美味しいのができました。っていうことだったんだけど、もう少し聞いてみると、酸っぱいけど美味しかったということみたいだった。これはこれでいいとは思うのだけど、たぶん昔だと腐造ということなんだろうと思う。なんで「もと」が必要なのか、その構造を考えてみると、いろいろな雑菌のいる中で日本酒を醸造するには、まず雑菌を死滅させなければならない。この雑菌を排除するのが乳酸菌が生成した乳酸の酸なんだ。だから蒸米と米麹と水を入れたら、まず乳酸菌を培養して乳酸をつくってもらい雑菌が生活できないような環境をつくる。樽の中を乳酸菌が征服して雑菌がいなくなってから、酵母菌を増殖させる。最終的には酵母菌が乳酸菌を駆逐して酵母菌に征服させてしまう。完成した「もと」の中に生きているのは酵母菌だけとなる。そして乳酸菌は死滅している。しかしその中には乳酸菌が生成した乳酸は残っている。というようなこと。この昔ながらのやりかたで日本酒を仕込むと「もと」の中の乳酸のおかげで仕込中の日本酒の中には雑菌は繁殖せず、かつ酵母菌がワンサカいるので乳酸発酵もおこさない。だから酸っぱくならないお酒ができるのだ。味覚は人それぞれだから、それはそれでいいことだと思うんだけど、早く飲まないと酸っぱくなるってのはどうだかな〜って思うわけよ。
ご先祖さまの考えておられたことをもう一回考えてみるのもいいのではないかな。

















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