禅寺小僧

日々の記です。

和合について








 聖徳太子(574〜622)は、十七条憲法の第一条で
「和をもって貴しとす」と和合の大切さを説かれ、第二条
で和合のためには「篤く三宝を敬え」と述べられました。
三宝とは、仏、法、僧のことです。仏とは悟りを開かれた
お釈迦様、法とはお釈迦様の説かれた悟りに至るための教え、
僧とは悟りにむかって修行している僧侶たちのことです。
 

法隆寺住職の大野玄妙さんは、「『仏』は目標や理想、
『法』はそれを達成するための計画書や指南書、
『僧』は目標や理想に向かって共に努力する仲間と置き換えて、
社会や企業などの組織・団体、地域や家庭、あるいは個人でも、
地に足をつけて希望ももって生活し、和を実現するのには、
この現代の仏法僧が必要なのではないでしょうか。理想や計画を
持たず、仲間もつくらない。そんな今日の風潮が引き起こす悲惨
な出来事が多すぎるような気がします」とおっしゃっています。
 

日本の「和合」に似た言葉に「平和」があります。「戦争と平和
の平和です。平和は明治の翻訳語で、ラテン語ではPaxです。
Pax Romana といえば、「ローマの平和」と訳せますが、ローマ
帝国によって維持された平和のことを指しています。二十世紀には
パックス・アメリカーナいう言葉がよく使われましたが、「アメリ
の力で実現する平和」という意味です。ですが力で相手を屈服させた
としても相手の心は変わらず、互いの理解が生まれないことは、
征服と被征服の歴史をみればわかるでしょう。


道元禅師は出家人の集団について、「水乳の和合せるがごとし」
とおしゃっていますが、水と油のように離れあっていた個我と個我が
和合の心で水と牛乳が混じりあうようにうちとけあえるのかもしれません。