禅寺小僧

日々の記です。

樽屋さん。





いたことのある寺の隣に竹薮があって、いい竹が生えていた。
太くて、長くて、節と節の間が長い。竹の質も硬くて削ぐのに苦労する。
(これはいいのか悪いのか半々やけど)
今年の冬、上賀茂で最後の樽職人が電話であそこの竹がほしいと言う。
で車で一緒にいったら、寺の人は忙しそうだったんで、まあ後で言えば
エエやろって、帰ってあとから電話したら、えらい怒られた。
切ってるところを京都市に見つかってえらいおこられたんだそうだ。
しかもあそこは○×さんのところの地所なんだ、と。
 
 
 
 
 
けれど適当に切って間引いていない竹薮の竹の質は薄くてさくかった。
長さも短くなっていた。昔は日本一の竹薮と思っていたのだったけど。
今回、京都上賀茂名産のスグキを漬けるときに最初、一晩塩漬けにする
背丈より巨大な樽のタガの修理のためだったからどうしても長い竹が
必要だったのだったが、大樽の作れる老職人は、もう材料が手に入らなく
なった。終わりだ。といった。





寒さのせいか、修理の途中に老職人は死んでしまった。
一緒に彼方此方の竹薮に行ったから、戒名には竹の一字を入れる。
京都府も最近になって保護を考えるようになったんや。
豆腐屋でもそうやが酒蔵も昔は木の樽で仕込んでたのが今は金属の
タンクや。そうすると何處の蔵も同じような味になってしまうんや。
木の樽やと菌がすみついてその蔵の味になるから。と言うとった。




師匠に竹薮の話をすると、
おお○×さんならよく知ってる。ナンボでも言ってやるぞ。
とのことだったが、もう竹もいらなくなったし、樽も作れなくない。
すべて、遅いし、手遅れ。



形見わけだと、表千家宗匠が注文したという水屋桶二つと水指、
御供えを盛る半切りみたいなのと、背格好が同じだからと、
着物と下駄をもらった。
お茶のお点前でもするか、
袖の短い着物着て、遊びにいくか。





    




形見わけ