禅寺小僧

日々の記です。








おだやかな気持ちのいい午後、本を見ていた。蛇年だ
からか蛇の四角いモノクロの写真と解説がのっている
百科事典か図鑑のような本だった。西表島か沖のエラ
ブ島かもしれない。ページを眺め呼んでいると、私が
著者だという人が横からあらわれた。髭をはやして学
者にも漁師にもみえる。海蛇を見せにつれていってほ
しいとお願いすると、今日は忙しいんだと言った。魚
礁を海に設置する手伝いの仕事があるのだと。港の岸
壁には今度沈める魚礁が縦横の列になって並べられて
いた。このあたりでとれる一抱えくらいある大きな丸
石をコンクリートでつなぎ合わせてピラミッド型なん
だけど細長く、塔のようになっている。魚礁を沈めた
場所がわかるように、黄色い三角の旗のついたブイも
あった。学者が魚礁を沈め、他の漁師も海に出てその
場所を覚えておくのだと。この魚礁は海面から投下す
るとうまく沈んでいくので吊り下げて設置しなくても
いいらしい。















道の横の小屋に父親がいた。おい、チェーンソーの手
入れしといてくれ、っていう。しばらく使っていなか
ったみたいで、潤滑オイルのポンプを押してチェーン
にオイルをまわして、エンジンにガソリンを送りこん
でスターターの紐を力一杯ひっぱると何度目かにかか
った。ブーンとエンジンの回転は上がったが、ガソリ
ンタンクからキャブレターにゆくパイプが外れかかか
っていて、ズレたパイプからゴボゴボッとガソリンが
漏れた。危ないなあ、道の上に置くと、案の定、地面
の上にこぼれたガソリンに火がついて炎につつまれ
た。火が自然鎮火して、もう一度エンジンをかける
と、もう一度ガソリンがこぼれて、また火がついた。
火傷するかとおもったけど、うまいぐあいに火傷はせ
ずにすんだ。












小屋の横の土手を何のためだったか、両手で棒を持っ
て先でほじくると、穴が空いてて黒紫色のなんかが出
てきた。ワタリ蟹じゃないか。食べたかったんだ。
(ワタリ蟹はガザミっていう奴で海で泳ぐ蟹だからほ
んとは丘の土手なんかにはいないんだけど)ちょとほ
じくるともう一匹出てきて、またほじくるとまたもう
一匹出てきた。こいつは鋏が強くて挟まれたらたいへ
んだから、紐でしばっておかないと危ない。紐を取っ
てこなくては、というところで目が覚める。






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