禅寺小僧

日々の記です。

遡上行2










ここは森が深くない山で、その昔はもっともっと禿だらけになっていて、
遠目に見ると一種、異様な感じがした。山というのは木が生えているもの
だという思いこみがあるから、山じゅう禿だらけで白い花崗岩がむき出し
になっているのは見慣れなかった。見ていて、心のどこかが、落ち着かな
かった。この山に初めて鉱物採集につれてもらったときは、澄んだ清水と
白い砂、巨大で剥きだしの無機質な巨岩が転がっているのに驚いてしまっ
た。全山のほとんどが花崗岩の山肌はボロボロに風化していて、登ってゆ
くとザラザラと崩れてしまう。現在は砂防植林事業のおかげで木が育って
しまったけれど、あのころは小さな木がまばらで、荒れ地だった。荒れ地
は故郷だった。家の近所にも宅地造成を始めたものの、開発許可の関係か
なにかでそのまま放り出された広大な場所があった。野球のグラウンドな
ど何面でもはいるその場所は、木が切られて、表面は削り取られていた。

住宅地にすべく造成がはじまった平地だったけれど、雨水にどんどん削ら
れて、何本も何本もクレバスが走っていた。そのあたりは山砂利の産地だ
から砂や砂利でできているのだけど、雨水が作った谷は5メートルくらい
の深さがあったとおもう。木がなくて、雨にたたかれると信じられないく
らいの浸食がおこるのだった。











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