禅寺小僧

日々の記です。

あのコーナーの、向こう側。

hekigyokuan2005-08-07



夏の日差しの中、峠道をゆく。ちょっと深く山の中に入り込む。都会は熱がこもっていて熱風すら吹かない。けれど山には山気というようなものがみちていて乾いて萎れかけた何かをうるおしてくれる。






変質者ではないけれど、そんなきれいな水が流れているのがすきで時折訪れる秘密の場所が何ヶ所かある。けど最近は車で入れるところはどんどん減ってきているようだ。ある日、突然、車止めの柵ができていて鍵がかかっていたりする。今は近くに行ったついでに立ち寄るぐたいだけど、昔は時間がたっぷりあったからそしてタダで体力がいくらでもでてきたから、自転車で行っていた。高校の時はサイクリング同好会なるものに入るために5000円の中古自転車を買い、電車、地下鉄、バスとのりついてゆく通学に電車と同じ時間で自転車を走らせ、冬なんか、学校についたら身体から湯気が立ち昇っていた。距離にして20キロはあるだろう、今から思えばまったく馬鹿みたいに体力の有り余ってるな身体だったな。そんな頃、授業が終わってから京都北山あたりに走りにゆく、キコキコ、ペダルを踏みつけ、ハンドルを引っ張りして勢いをつけてクネクネ道を上ってゆく、あそこ峠だ!というところで、グイ、とペダルを踏み込む。峠の頂点にまでいたるエネルギーがあるか?止まりそうになりつつ、静かにコロコロと車輪が転がり始め、スピードを足してゆく。赤く火照った身体に風が吹きつける。そんな瞬間がすきだ。








今は車で道無き道、やこのまま行ったら途切れてしまいそうなところを走るのが気に入っている。そして今でも峠を越すときは、向こう側の世界はなんだか雰囲気が違っていそうな予感と期待が充満している。初めて走る道でもそうだし、かつて通った道でもそうだ。草いきれのするギラギラする峠を越える。あのコーナーを曲がったら、あの頃の、何も知らず、痩せこけて汗と垢だらけの若者が、かつての自分が走っているような気がして。







コーヒーを冷やして飲むと美味いよ。