禅寺小僧

日々の記です。

迷子になった。

hekigyokuan2005-06-10

 着いた足でエッフェル塔に登る。写真でみると優美な姿だけれど、実物は逞しい骨格の恐竜みたいなヤツだった。四股を踏むようにしっかりと大地を踏ん張っている。そして世界中から観光客が集まっている。そこが京都と違うところだ。登ってゆくにつれてだんだん垂直にそそりたってくる。街の景観を一切変えてはならないこの都で、万国博覧会のために塔を作ったときはどんなだったろうか。たぶんみんなからブーブーいわれ、街にそぐわないと非難轟々であったにちがいない。パリの街のどこからでも見えるからね。石と街路樹の街に異質で超巨大な鉄塔が出現したのだから。しかし鉄は鉄と開き直って鉄骨そのものの造形をしたのがよかったのか、デザインそのものが剛健だったのか、次第に街に溶け込むようになり、ついにはこの街の象徴になった。真っ黒な建築ばかりのお寺のなかで山門だけが真っ赤なようなものである。エッフェル塔さえ写っていればパリの写真だ!と豪語してG-man氏に対抗してカメラを持ってくる人までいる始末だ。しかし腕の問題もあって彼のようには撮れなかったのがくやしいな。わが町京都の駅前に鉄の塔が立っているけれどその効果と存在感はどうなんだろうね。パリには負けているような気がしてならんけどね。この塔に引き寄せられて今日も何人の観光客が世界中から引き寄せられるのだろうか。絵になり写真になりデザインになり街の象徴としてあこがれと羨望とともに世界中にばら撒かれる。
 同行の人がブランド品を買うというのでついていったけれどすることがないので椅子に坐って扇子で扇いでいると、店員が話しかけてきて「それ、いいな。」という。「これは大変貴重なものなのだ。」からはじまって「扇子に書いてある字はなんと読むのか」「どんな意味か」とか「お前が書いたのか」話しているとぞろぞろ店員が集まってきた。「それが欲しい」と言われて「この店のものやったらなんでも交換してあげるよ」というセリフが咽喉元まできてたけど師匠からもらったやつだったので、泣く泣くやめといた。自分で書いたのをもっていくべきだったな。ちょっと残念だ。そうこうしていると別の店員がやってきて「お前の友達は出て行ったぞ」という。「バイバイ」したけれど表にでてみてもどこにもいない。エライことになった。あちこち探したけどわからん。今回は仕事?できているので観光の予定もなく地図ももってきてない。ホテルからここまでタクシーで来たから、ここがどこなんかすら分からない。見知らぬまちで迷子になっちまった。この歳で。あちこちふらふらするうちにパルテノン神殿みたいなところがあってみんなが表で坐っているので中にはいってみるとそこは教会だった。心をおちつけてバス停にいき「ここはどこなんですか。」ときいて親切な人にアドバイスしてもらい、地下鉄にのってエッフェル塔近くのホテルにまで帰った。駅名を全部メモして、乗り換え駅も全部書いて。切符の買い方もわからんかったけど周りの人に助けられてなんとか帰れた。帰ったら「あとであの店に何度も探しに行ったのに。」といわれた。