禅寺小僧

日々の記です。

暗い部屋

 身体を壊して途方にくれているときに、
かけがえのない友達にであって、また、
暗室という空間に出会えて、よかった。
あの頃のぼくの居場所になった。
暗室があったおかげでどれだけ助かったかわからない。
そこは学校の中でも秘密めいた異質な場所だったし、
写真自体になんだかそんなところがあった。
現像液の中に浸かった印画紙から画像が出てくるのは
プリンターからジワジワ紙がでてくるのと違って
少年の心は高ぶったねえ。
どうもデジタルのほうにはああいう感じはないなあ。
現像液のヌルヌルもないし、酢酸の刺激臭もしない。
定着液から亜硫酸ガスがでてくることもないんだが
あの暗い部屋でどれだけドキドキしたかわからない。

 暗くて狭い部屋ということでは茶室もそうだな、
とおもうと、そんなところでピチャピチャするのが
どうも人間のこころを開いていくのになにかプラスになって
いるのかもしれないな。
広くて明るい大広間より、狭くて暗いぐらいの部屋のほうが
心がのびのび広がるのかもしれない。

 写真はデジタルになってやっぱし気楽に撮れるようになった。
現像という作業自体まったくなくなってしまった。
たぶん今の学生さんはデジタルで手堅くやるんだろうけど、
俺たちのときは苦労して現像したりしておもしろかった。
大変だったけど。