禅寺小僧

日々の記です。

カラスのお経










陽が暮れてゆくころ、方丈の縁側で白砂の庭を眺めてる。夕方の昏鐘を聞いているんだ。風がある。ありがたい。小鳥が鳴いている。大鐘は日没の6時から打ち始めて、丁度10分かかって18声打たれる。最後の鐘のまえにはゴーンゴーンと2回続けて打つのが、この次が打ち上げですよっていう合図だから、そのふたつ続けて鳴るのを待ってるんだ。18声が鳴ると同時にお経を始めないといけないから。一日が静かに終わってゆくのを聴いてるようなもんで、何もせずにただ待つのはなんとも満ち足りてゆったりした一滴の貴重な時間なのだと思う。












鐘の音を聞きつつ、暮れてゆく日の光を眺めていると、向こうのお堂の大屋根のど真ん中にに今夕も烏が一匹エラそうに止まってやがる。屋根の上からこっちを見下ろしてカアアア〜って鳴く。お経を馬鹿にして妨害しようとやってきたのだ。カラスなんて人間からしたらあんなちっこい身体だけど、声は大きく澄んでなかなか野太い。カアアのアのとこがグッと押してくる。













奴が屋根で鳴くのを見ると、「かああ〜」の「あ」のところで、ちょっと翼を開き気味にて尾羽を上にあげる呼吸をする。下っ腹が伸びて、腹の底に声がはいる。なるほどねえ〜、野太い声が出るってわけだね。カラスの呼吸でお経あげたろか?馬鹿にしやがったな、勝負じゃ〜って楽しみにしてた。和尚らさんが忙しくて一人でお経をあげる日があったんで。ところが、台風の影響で和尚さんらの用事が無くなってしまい、一人でお経のつもりだったのが、そんな日は、無くなってしまった。


台風一過














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