禅寺小僧

日々の記です。

無音の雪




琵琶湖の向こう側の、うしろはもう鈴鹿山脈が迫っている。
祈祷会に呼んでもらった。
近江もお地蔵さんの多くて、山門から上ってゆくと和尚さんがきれいに
されているんだろうな、石垣沿いに沢山の石仏さんが並んでおられ、それ
だけでうれしくなってしまう。あちこちの土の中から出てこられた仏さん
なんだろう。和尚さんに聞いてみたら、誰に習ったってわけでもないけど、
伸びるんで自分でパチパチやってますよ、って言っておられたから、庭が
お好きなんだ。


山に登っておられたらしいですね、というと
いやあ年に一回だけの楽しみですわ。みんなと休み合わないし、独りって
いうのも多いんですけど、3000メートルあたりで樹林帯も越えてしまうと
音が無いんですよ。せせらぎもなければ、鳥も虫の声もない。木の音も。
自分が黙っていたら、もうなんの音もない。あるとしたら風の渡る音くらい。
そんな中にいると、なんか違う気分になりますよ。


車の音も、話し声も、携帯の心配もない地帯。
なかなか遠くて行けないけどね。
やっぱり危ない目にも沢山あっておっかなびっくり帰ってきたことも何度も
あるのだと。技術もないしますます無理だな、これは。
音の無い世界ときいて、砂漠に行った友人の話を思いだしていた。
茫漠たる砂の海も、無〜〜の世界らしい。
あんまりごちゃごちゃしてないのがいいな。


大峰山も、あれ午前2時くらいに起きて、出発するんですよ。
懐中電灯点けて、見えるのは足元だけ、あるいている左右両側は崖になってる
馬の背で、周りは真っ暗。雑念どころではありません。自分の命を守るので
精一杯で。ただ歩いて行く。東の空が白んで、太陽が昇ってきたら、ああ、
朝ってこんなにいいんだ、っておもいますよ。







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