禅寺小僧

日々の記です。

次の日、










午後から予定になく時間が空いてしまった。今回の旅のスケジュールはなか
なか混んでいて、ほんとに余裕がないものだったのだけど、ポンと突然放り
だされた。どこに行くか?まえにオランジェリ美術館をすすめてくれていた
人がいたらから行ってみたい気もしたけれど、なんとなく決心がつかずに、
メトロの駅を目指して坂を下りていった。賑やかなサンジェルマン通りにで
ると、メトロの入り口をスルーして道を渡り、歩くことにする。路地を抜け
て、川沿いにの大通りを少し歩いて、橋を渡る。変化のない曇天で写真を撮
る気にもなれずそのままゆく。途中の郵便局で日本語風フランス語でテレホ
ンカードを買う。裏を削ってナンバーを入力するんや、って説明してくれた
んだ、と思う。なかなか丁寧にしてくれた。














教会についたら、大きいクレーンが来ていて外観の修復工事中だった。古い
教会の壁に新しいクレーンが新鮮で、横の入り口に行ってみるとすんなり入
れた。サント・スタッシュ教会は奥行きが100メートル程ありそうな巨大なゴ
シック建築で、世界で一番多い4000本のパイプを持つのオルガンが設置され
ている。おととしミサに参加したときには巨大な音楽の雲が上空一面ににう
ずまいて覆っている感じがした。ちょうど二年前、ここでのコンサートに参
加させてもらった。今朝もミサがあったのだろうけど、今は何人かが教会の
中にいるだけ。後ろのマリア様のところでは、ひざまづいて一心にずっと祈
っている女の人がいた。













ここは丁度真下に地下鉄の駅があるそうで、駅の温風が床の排気口が出てく
るので暖かいんだ。座面を草で編んだ椅子にすわって、何するわけでもな
く、ぼうっとしていた。後ろのあそこの扉から出てきて、こっちに舞台を作
っていたな、あの説教台でシリアの歌手が歌ったんだな、なかなか許可がで
なかったんだったんだな、とか思い出して。二日間あったコンサートはチケ
ットが売り切れて、両日とも1000人程の人が来てくれた。あんときは大きい
ことしたもんだったなと思い、ここに来たきたのは、犯罪者が犯罪現場にき
っと戻ってきて何かを確認せずにはいられないようなのと似ているのだろう
か。長い時間を過ごす。声低く、般若心経を、何度も、何度も。












ここに来るまで、落ち着かない日々を過ごしてきた。大きい山がいくつもあ
って、出発するまでやり残しのないように、あれもこれもの毎日で、練習す
る暇なんてなくていつもが本番だった。ここから帰っても、すぐにまた新し
い山が待ちかまえている。こんなことで、なんとかなるのか大いに不安なの
だけど、すべてのことをクリアしなければいけない。この旅から帰ってから
のことも不安は沢山あって、失敗すれば、忙しいときに旅になんか出てるか
らだ、と言われるだろう。けれど、目前のことに集中するしかない。今のこ
とを終えてから、次の行事の準備をはじめようと思う。ポケットからいくら
か出して、蝋燭を買い、献灯させてもらって、マリア様のところにお参りす
る。この土地の神様によろしくお願いします、ひざまづいてお願いします。












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