禅寺小僧

日々の記です。

秋になって、

hekigyokuan2006-10-30

 御参りでおじゃましたら床の間に菊が一本、活けてある。
緑の葉のところどころを、霜が赤く染めていて、花の色は
黄色だった、或いは白か赤か、と記憶はオボロなんだけど、
赤くなった葉のようすが妙に頭にこびりついているな。
誰もがモミジの紅葉には眼を奪われてちょっとした陶酔を
おぼえるけれど、土壁を背にした小さな初冬には、思わぬ、
驚きがあって、誰が活けたか、眼に見せられた感があった。
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菊の季節になったが、捨て育ちで、手を入れていないから
上に伸びないで横へ、横へ野生的に伸びて花をつける。
昨日の日記の紫色の菊はただの野菊で、どちらかといえば
雑草のたぐいだけど、なんとなく抜かずにおいていて、毎年
花をつけてくれている。春のサクラは枯れ木のように葉がない
ところから、生命力が爆発するように咲き誇るけれど、
菊は命の尽きるのを知っているように、下の葉からゆっくり
枯れながら、咲いてゆく、残照のように。
秋の花にはちょっと、うらぶれたところがあって、いい。