禅寺小僧

日々の記です。

閻魔王と地蔵菩薩

hekigyokuan2005-06-30

 手元に本が無いのでザッとだけど、日本霊異記や今昔物語にこんな話がある。藤原朝臣広足が机に座ったまま夕方になっても動かないので起こそうとしたら、死んでいた。葬儀の準備をしている三日のあいだに息を吹き返して、こんなことを言った。「ヒゲが逆さまに生え、赤ら顔で、鎧をつけた男鬼二人に追い立てられて一本道を歩いていた。進んでいくと一本道が途切れて、暗くて、深い、澱んだ川になっていた。水の中に樹の枝が刺さっていたが枝の先は底についていない。「俺の足跡を踏んでついて来い。」といわれて足跡を踏んで川を渡る。さらに進んでいくと幾重にも重なった光る楼閣があって、四方に玉のすだれをかけている。中に入ると大王の前に出された。大王がいう、「お前はこの人を知っているか。」見ると妊娠したものの子供を産めないまま死んだ妻だった。「私の妻です。」というと「この者が受ける6年の罪のうち3年は終わった。お前との子供のことで死んだので、あとの3年をお前と一緒に受けたいと言っているが、いいか。」というと、妻が「この人が現世に帰って修善するなら許してやってください。」というので大王に「何かするか」と聞かれて、「法華経を筆写し、講読供養します。」といった。妻が「それならば今すぐこの人を帰してあげてください。」という。帰りがけにふと気になって大王に「あなたの名前はなんというのですか?」と尋ねてみると「わしの名前には閻魔大王で、お前の国では地蔵菩薩と言っておる。」といった。「しるしをつけておいたから、お前は国に帰っても災難に遭わぬ。」といわれたその指は一抱えもある程大きかった。。これは不思議な話である。おしまい。